キョンの健康被害について
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「キョン」、知ってますか
最近、「キョン」という鹿の仲間である哺乳類が千葉県で増えているというニュースを耳にした方もいるかもしれません。キョン(Muntiacus reevesi)は中国南部や台湾を原産とする小型の鹿の一種で、日本では本来の生息地ではありません。しかし、ペットや観賞用として持ち込まれたキョンが野生化し、日本国内、特に千葉県で繁殖していることが確認されています。
現在は千葉県に限られていますが、個体数が増えているということで、今後、茨城県や栃木県などにも拡大し、実際に目撃する機会が増えるかもしれません。怖いですね。当院は鹿野クリニックなので、鹿の仲間であるキョンがどのような影響をもたらすのか、特に健康面でのリスクについて心配になり、調べてみました。
キョンによる健康被害の可能性
まず、ダニ媒介の感染症に関する懸念があります。千葉県南部はダニの生息が多く確認されており、特にマダニが媒介する日本紅斑熱や**重症熱性血小板減少症候群(SFTS)**が発生しています。キョンが増加することにより、ダニを通じてこれらの感染症が拡大するリスクが高まるとされています
キョン自体が病原体を直接運ぶわけではありませんが、野生動物として多くのダニが付着している可能性があり、そのダニを介して人に感染症が広がることが懸念されています
例えば、日本紅斑熱は千葉県南部で毎年報告されており、春から秋にかけて多く発生します
予防としては、長袖や忌避剤の使用、帰宅後の入浴などが推奨されています

さらに、農作物への被害も深刻化しています。千葉県ではキョンが野菜や果樹を食い荒らし、農業被害額が増加しているとの報告があります。2022年度には、農作物の被害総額は約3億円に達しています
さらに、生態系への影響や、農作物に対する被害も懸念されています。キョンは草食性の動物であり、農作物や野生の植物を大量に食べるため、地域の植物の多様性に悪影響を与える恐れがあります。過剰な摂食によって森林や農地が荒れ、他の動物や植物の生息環境が破壊される可能性もあります。また、農業被害に関しては、千葉県内でもすでに報告が出始めており、作物に大きな損害を与える可能性があるため、今後のキョンの分布拡大は注意深く監視されるべきです。
まとめ
結論として、キョンが人に直接的な健康被害をもたらすリスクは低いものの、ダニを媒介する感染症や生態系、農作物への影響については無視できません。今後、キョンの生息域が拡大した際には、こういったリスクと付き合って行く必要があるかもしれません。